20世紀を代表するバレエ振付家ローラン・プティ。
その代表作のひとつ、1965年にパリ・オペラ座の委嘱により制作した「ノートルダム・ド・パリ」も、ファッションやアートの一流クリエーターが参加した豪華な舞台です。
今回は「ノートルダム・ド・パリ」制作に関わった豪華一流クリエーターたちについてご紹介します。
Photo:Christian Coigny
ローラン・プティ Roland Petit (1924-2011) / 振付・台本
20世紀を代表する振付家。パリに生まれ、1940年、パリ・オペラ座バレエ学校を卒業後、オペラ座バレエ団に入団。20歳の頃から振り付けを始め、創造性と演劇的センス、エスプリに満ちた作品を次々と発表し、瞬く間にフランス・バレエ界を代表する振付家としての名声を確立する。48年にパリ・バレエ団を結成。翌年、主演にジジ・ジャンメールを得た「カルメン」で大成功を収めた後、ジジと共にハリウッドに渡り、フレッド・アステア主演のミュージカル映画などを振り付けた。また、フランスではジジを主演にレビューやショーを制作。65年、20年ぶりにパリ・オペラ座に戻り、傑作「ノートルダム・ド・パリ」を振り付けた。また、72年から98年の間は、国立マルセイユ・ローラン・プティ・バレエ団で「失われた時を求めて」「コッペリア」など、数々の作品を生み出す。
日本では牧阿佐美バレヱ団で96年に「アルルの女」、98年に「ア・リタリエンヌ」と「ノートルダム・ド・パリ」、99年に「シャブリエ・ダンス」と「若者と死」を、いずれも日本のバレエ団として初めて上演した。また、2001年には、牧阿佐美バレヱ団の創立45周年を記念して委嘱した作品「デューク・エリントン・バレエ」を世界初演。04年には「ピンク・フロイド・バレエ」を新制作した。
世界のバレエ界への多大な貢献と、01年にボリショイ劇場で新制作した「スペードの女王」の成果が称えられ、03年にフランス人芸術家として初のロシア国家章を受章。同年の秋、日本で旭日中綬章を受章した。
モーリス・ジャール Maurice Jarre (1924-2009) / 音楽
リヨン生まれ。パリのコンセルバトワールで打楽器やオンド‐マルトノ(電子鍵盤楽器)の奏法、作曲、指揮を習得。数多くの劇音楽、映画音楽を手掛け、「アラビアのロレンス」(62年)、「ドクトル・ジバゴ」(65年)、「インドへの道」(84年)で3度オスカーを受賞した。ローラン・プティのバレエでは「マルドロールの歌」(62年)と「ノートルダム・ド・パリ」(65年)を作曲している。
ルネ・アリオ René Allio (1924-1995) / 装置
マルセイユ生まれ。文学と美術を修め、絵画に没頭した後、舞台装飾に進路を見出し、数多くの劇場で舞台美術家として活躍。ローラン・プティのバレエでは「ノートルダム・ド・パリ」(65年)、「アルルの女」「プルースト―失われた時を求めて」(74年)、「嵐が丘」(82年)、「四季」「ハリウッド・パラダイス」(84年)を手掛けた。フランスでは映画監督としての知名度が高く、65年のデビュー作「老婆らしからぬ老婆」が各賞を受賞して以降、コンスタントに話題作を撮り続けた。
イヴ・サン=ローラン Yves Saint Laurent (1936-2008) / 衣装
アルジェリアのオランに生まれる。パリの服飾デザイン専門学校で学び、ディオールの主任デザイナーを経て、自身のメゾンを設立。62年にイヴ・サン=ローランの名で最初のコレクションを発表し、世界中に200店以上のブティックを展開する、フランスが誇る一大ブランドとなった。映画や演劇、ダンスやミュージック・ホールでの衣装も手掛け、ローラン・プティのためにバレエ衣装をデザインした作品には「シラノ・ド・ベルジュラック」「マルドロールの歌」「スペイン狂詩曲」「アダージョとヴァリアシオン」「ノートルダム・ド・パリ」「薔薇の死」「ジェエラザード」がある。
ローラン・プティと牧阿佐美バレヱ団
牧阿佐美バレヱ団は9つのプティの作品を上演。いずれも日本のバレエ団として初演を果たしてきました。ローラン・プティとバレヱ団の交流は1996年の「アルルの女」の上演から始まり、98年には「ノートルダム・ド・パリ」を文化庁芸術祭主催公演として上演。中世パリの雰囲気そのままに、光と闇の織り成す濃密な世界を表現したダンサーたちの健闘が各紙の絶賛を集め、以後、2000年、2003年、2005年、2006年、2012年、2016年と再演を重ねています。1999年には「若者と死」を、パリ初演時(1946年)のオリジナルの装置で上演。パリのアパルトマンの部屋と夜景が舞台上に現出する壮大な装置も話題を呼びました。2001年には、バレエ団創立45周年を祝して新作「デューク・エリントン・バレエ」を制作。ジャズ音楽に振り付けた本作は翌年、ナポリ・サンカルロ劇場でも上演され、日本発の作品として重要な意義を担いました。2004年、「ピンク・フロイド・バレエ」を新制作。光と音、映像で圧倒するロック・ミュージック・バレエを携えて、翌年はバルセロナ、パリ、ビアリッツの3都市、2006年はスペイン5都市を巡演。現地での熱狂的な歓迎は、2008年「デューク・エリントン・バレエ」のスペイン8都市ツアーへと繋がりました。
2020年3月、新たなキャストを配した「ノートルダム・ド・パリ」の上演で、牧阿佐美バレヱ団は世代を越えてプティ作品を踊り継いでゆきます。
牧阿佐美バレヱ団の初演
1996年9月 「アルルの女」
1998年8月 「ア・リタリエンヌ」
11月 「ノートルダム・ド・パリ」
1999年5月 「若者と死」「シャブリエ・ダンス」
2001年7月 「デューク・エリントン・バレエ」
9月 「レ・トロワ・ジムノペティ」
2003年3月 「エリック・サティ・バレエ」
2004年2月 「ピンク・フロイド・バレエ」