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舞台芸術 <織山 万梨子>

このたびの新型コロナウイルスに罹患(りかん)された皆さまに、心よりお見舞いを申し上げます。

 

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の対策として公演自粛の要請を受け、残念ながら3月公演『ノートルダム・ド・パリ』は中止となりました。

公演を楽しみにお待ちいただいていたお客様には、大変なご迷惑とご心配をおかけしておりますことを心よりお詫び申し上げます。

中止のお知らせをした際に皆さまから温かい励ましの言葉をいただき、誠にありがとうございました。

 

2月末にルイジ・ボニーノ氏が来日し振付指導をしてくださり、あと2週間で本番という時点での公演中止という決定は、私たちダンサーにとってなかなか現実として受け入れがたくショックなことでした。

『ノートルダム・ド・パリ』は、本番で舞台上からダンサー全員がシンプルな動きを通してエネルギーを出し、モーリス・ジャール作曲の身体中に響き渡るような音楽とイヴ・サンローランの鮮やかな色とりどりのお衣装と共にお客様にインパクトを与えるということ、そしてそのパワーを劇場全体が一切の淀みなくクリアに感じることができる作品だと思います。本番でしか味わうことができないそのパワーを楽しみに想像しながらリハーサルをしていたところだったので、本番を迎えることができず非常に悔しいです。

 

舞台を創るスタッフ、舞台上のダンサー(演者)、舞台と客席の間で演奏するオーケストラ、お客様が集まり、一つの空間や時間を共有し全員のエネルギーで作られる舞台芸術。先行きが見えずに全世界で見えない脅威とたたかう不安な日々の中で、舞台芸術というものがいかに尊いかを実感しています。

生活から無くなっても支障が無いとされる舞台芸術やエンターテインメントですが、それらによって心が潤い生活に彩りが加わっているということの大事さに改めて気づかされます。

また、ダンサーやスタッフにとって舞台上演やそれに向けての準備は仕事です。舞台芸術は観客がいることで初めて成り立つものであり、公演収入により生活しています。「生活に無くても良いもの」ではなく、「生活するために必要なもの」なのです。

新型コロナウイルスの影響により、世界中が健康、精神、経済などにおいて非常に苦しい思いを抱えていて、未知のウイルスを相手に明確な対策も見えず、日々対応を迫られる厳しい状況です。この事態が少しでも快方と改善に向かい、大切な日常生活が戻ることを強く願います。

 

 

幸いにもバレエ団では、昨日まで日々のクラスと、4/12(日)に上演される予定の第68回橘バレヱ学校公演のリハーサルを行っておりました。

 

昨日は、橘バレヱ学校 創立70周年 記念公演として牧阿佐美バレヱ団員が出演する、当校設立者である橘秋子振付の『角兵衛獅子』第2幕(詳しくはこちら)の通し稽古が行われました。

 

曲芸

たいこ

毛やり

姉妹

赤いさらし

虚無僧と姉

 

残念ながら、本日からバレエ団が休みになることが急遽決まりました。また皆で集まりクラスやリハーサルを行うことができる日を心待ちにして、休みを有意義に過ごしたいと思います。

 

 

牧阿佐美バレヱ団6月公演「ロメオとジュリエット」では皆さまに安心してご鑑賞いただけるよう祈りながら、準備してまいります。劇場でお会いできることを心よりお待ち申し上げます。

 

一人一人が自分の身体を大事にし、周りへの配慮を忘れずに過ごすことの大切さを身に染みて感じています。

どなた様も健康と安全にくれぐれもお気をつけてお過ごしくださいますようお願い申し上げます。

 

 

織山 万梨子