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バレエの饗宴とアルルの女 <田切 眞純美>

お久しぶりです、田切眞純美です。

 

我々バレエ団は先日の10月3日に「NHKバレエの饗宴2021 in 横浜」に出演いたしました。昨年のバレエの饗宴がコロナの影響で中止になり、1年飛んでのバレエの饗宴です。中止になってしまった2020年のバレエの饗宴では清瀧千晴さんがブベニチェクのカノンを他バレエ団のみなさんと踊る予定でした。見たかった、、、。

 

緊急事態宣言が明けた直後でまだまだ普通に公演を行うことが難しい現状でたくさんのバレエ団が出演するこの公演が行えたこと本当に嬉しいです。恒例の全団体が出てくるカーテンコールは無くなってしまい残念でしたが、、、(コンテからクラシックまでいろいろな衣装や団体が舞台上に集結してなんだか面白くて好きでした)

 

今回はNHKホールが改修工事中のため神奈川県民ホールでの上演となりました。劇場出てすぐのところに山下公園があり、リハーサルの間にお散歩してリフレッシュ。

レッスンとリハーサルは別スタジオで行い、

中華街を歩いてホールへ移動

我々はローランプティ振付の「アルルの女」を上演いたしました。作品力があまりにも強いこの作品。音楽、振付、演出の構成力が強すぎて作品にダンサーが負けてしまうんではないかと飲まれてしまうのではないかとリハーサルしながら度々思いました。

そしてこの作品の大きな特徴としてタイトルロールの不在性があります。しきりに表現されてる主人公の想い人アルルの女は原作にもプティ振付のこの作品にも出てこないのです。タイトルロールが出てこない作品というと私は「ゴドーを待ちながら」を思い出します。不条理劇の最高峰ですね。物語の中心になっている人物が出てこないことによって不条理さそして不気味さまたは滑稽さがジワジワと見てる側を包んでいきます。

主人公フレデリの狂気的な妄執、或いは周りの仲間たちの古めかしい因習とでもいうような地域に縛りつけるような不気味さが際立ちます。プティのアルルの女ってもしかしてある種不条理劇なのではとアンサンブルの使い方を見ても思います。そして不在性によって、ここではないどこか、ここにはいない誰か今の自分ではない自分への憧れという若者が誰しもが一度はぶつかるであろう人間の普遍的な感情を強く主人公に私は感じます。アルルの女をより魅力的するために物語に出現させてないのはもちろんですが、そういう風に私は感じました。

 

もっと端的に捉えてもいい作品だとは思うのですが感じ方は受け取り手の自由!!ただひたら主人公の感情に身を任せてもとても楽しいし。10/9、10/10にはローランプティの夕べで「アルルの女」を見る機会がございます!この作品のフツフツと込み上げる“何か”を体感しませんか?10/9はNHKでも主役を踊りました、水井・青山ペア。10/10は別キャスト清瀧・光永ペアです。なかなか上演機会の少ないアルルの女ぜひお見逃しなく!

NHKバレエの饗宴メンバーで