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愛について、なにか話して④ <渡會 慶>

こんにちは。

 

牧阿佐美バレエ団団員の渡會慶です。

もう今年も残すところわずかですね。

今年はどんな年でしたか?

 

私はついに一人暮らしを始めました。

 

引っ越した当初は家が寒くて暗くて全然帰りたくなかったのですが、ラグと電子レンジとケトルとホットカーペットを手に入れてからの生活の伸びしろがエグいです。

私は人間としての尊厳を取り戻しました。

それはまるで、ことばで一羽の鴎を撃ち落とすことができたときのように、それはまるでことばでバルセロナ行きの旅客船を増発できたときのように、それはまるでカニエ・ウエストがSunday Serviceを始めたときのように、それはまるで杉原千畝がただの紙切れで無数の魂を掬い上げたときのように、それはまるで福しんが月500円の餃子のサブスクを始めたときのように...

 

「 人間は、ラグと電子レンジとケトルとホットカーペットを手に入れてからの伸びしろが、エグいです ___ 」    "𝐾𝑒𝑖 𝑊𝑎𝑡𝑎𝑟𝑎𝑖“ 1993〜

 

改めて家族のありがたみを感じています。

ありがとう。

 

 

話は変わり、バレエ団は先月、文化庁主催により全国の小中学校を訪問して「ドン・キホーテ」を公演させていただく機会がありました。

今日はそれについてお話したいと思います。

巡回公演事業とは

 

文化庁が選定した文化芸術団体が、学校の体育館や文化施設でオーケストラ、 演劇等の巡回公演を行います。 

本公演前に文化芸術団体が実施校へ赴き、 鑑賞指導や実技指導を行うワークショップでは、 公演の鑑賞や児童・生徒との共演をより効果的なものとすることができます。

普段授業などで使っている体育館が、 工夫次第で素晴らしい舞台へと変わっていく様子を体感することができます。

 

-----文化庁HPより引用

 

人生で初めて体育館でバレエを踊りました。

 

スタッフさんにまるで劇場のようにリノリウム、照明や袖幕を設置していただいて、とても素敵な空間でした。

 

もちろん、プロセニアムアーチもオーケストラピットも無いので舞台上は客席と全く同じ高さの目線です。

普段とは違うコンディションの中、自分たちの環境に突然入り込んできたものを生徒の皆さんはどのように受け止めてくれたでしょうか。

 

自分自身、小学5年生の頃福岡に住んでいたのですが、自分の通う小学校に食育の授業の一環として、ラーメン屋さんの一風堂さんが来てくださったことがありました。授業で自分たちでラーメンと餃子をつくるのですが、それまで偏食で限られた物しかあまり食べることができなかった私が、自分でつくることによるラーメンのおいしさで豚骨ラーメンを食べられるようになり、そこから食わず嫌いがなくなり色々なものを食べられるようになりました。

それ以来一風堂に行ったときには卓上の味付きのかなり良いもやしを合法の範囲で空になるまで食べています、感謝。

 

小学生の頃に体験することはこれからの自分の好きなもの嫌なものを考える、自分を知っていくことだと思います。

私たちの作品をみて何かを感じて考えて欲しい、なんて驕ったことは言わないので、毎日の生活、これからも続いていく彼らの生活を 心を 一瞬でも撫でることができていたらいいな、と思います。

 

 

そして牧阿佐美バレエ団の「ドン・キホーテ」は来年2022年の1月8日に宮城県の仙台市でも公演させていただきます。

ぜひ劇場でもご覧いただければ幸いです。

 

 

私の仙台の思い出は、仙台駅でずんだシェイクが飲みた過ぎて、そのせいで帰りの東京行きの高速バスに乗り遅れたことや、牛たん屋さんの旨味太助と味太助がのれん分けか何かで兄弟喧嘩をしていてこの2つは一切関係ない、ということになっている、というどちらも微妙な思い出だったので、来月の公演では仙台が良い思い出になるように頑張りたいです。

 

そして、最後になりますが、先月、牧阿佐美先生がお亡くなりになりました。

私は先生とお話ししたことが数回しかなく、いつも先生が団員に向けてお話されるのを聞いていたうちの1人の立場でしたので、こうして文章にするのもおこがましいと思ったのですが、私の先生に対する思い、というよりも、団員や多くのみなさんの、先生に対する想いを目の当たりにしてしまって、ここまで1人の人に対する強くて純粋な想いを感じたのは初めてで、これは本当に特別ですごいことだ、と思ってしまいました。

誰もが先生のように生きられないと思います。

牧阿佐美バレヱ団に対して自分は何ができるのか、改めて考えてこれからも踊りたいです。

ありがとうございました。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

渡會 慶